○アイシャム:人間:愧拳闘士
踊り子で生計を立てているが、秘伝の格闘術を生かしたその動きは敵を寄せ付けない
○カーミル:人間:妖霊使いの刀士
華奢で儚げな妖霊アイユーヴと共に銘刀を使いこなす刀術は止まらない
○イブティカール:天使:神語術師
怠惰っぷりでは右に出るものはいないが才能はあるのが玉に瑕
○ラフィーク:天使:白炎魂装士
表面上は美形で人の心を和ませる偽善者、でも希望は捨てていないらしい
砂漠の向こうから彼らはやってきた
この時点ではどうやらどこから来たのか覚えていたらしい
出身の村でも紫杯連(マーリク)があり、享受者になる機会は得られたのだが
襲い来る生活苦に村人は紫杯連を見捨て、村ごと夜逃げしたらしい
もちろんその記憶も非認識の呪により村の跡地ごと消え去るのであるが、それはまた別の話である

ともかくそんな彼らが地上では世界最大の都であった瓦礫の街シェオールを目指したことと、
この煉獄(ゲヘナ)において最大の紫杯連である界螺(かいら)を目指したことも自然なことだったかもしれない
享受者といえど腹を空かせ、限界を迎え始めていた彼らをシェオールの界螺は受け入れることにした
受け入れることにしたのだが、最初の任務によって界螺から追い出されることになる

地方からやってきて顔の知られていない彼らに最適な任務、潜入である
界螺へ上納金を納めている貴族の息子が燐誡(りんかい)の者達に攫われたらしいので証拠を掴むのが使命であった
そもそもこの状況には奇妙な点があった、子供が消えて三日経ってもどこからも何の音沙汰もない
ただ紫杯連が街中へ潜ませている工作員たちの証言により
覆面をした男たちがこの街の燐誡の本拠地のある公衆浴場へ連れ去って行ったらしいと言うだけである
そんな詳しい話も全く聞かずに、それどころか腹を空かせているのも忘れ、だが前金はしっかり頂き
都会の紫杯連に慣れない享受者は燐誡の支配する地域へ走ったのであった

燐誡でも彼らは受け入れられた、やはりどこの紫杯連でも人材は求められているのである
しかしさすがに裏社会の支配を目論む紫杯連に手ぶらで信用されるのは甘い考えであった
何はともあれ飯にありつき、一息ついた彼らに新人らしい仕事が与えられる
瓦礫の街シェオール名物の遺跡は各紫杯連も探索しているが、その一つの掃除を任されたのである
もちろんただの掃除でないことは分かっていたつもりで遺跡に挑んだ彼らである
その小さな遺跡の石の扉を開き、潜り込んだ彼らを食屍鬼(グール)が待ち受けていたが
アイシャムの愧拳術の秘儀やカーミルとアイユーヴの連係プレイによりあっさり倒し
ラフィークもショートソードで惜しまず封印したのである

遺跡の掃除を難なくこなした享受者の器量を燐誡は認めた
しかし財力を否定しない彼らは大金を約束している界螺を捨てることを潔しとせず、情報収集に努める
だが都会の流儀に詳しくない彼らは燐誡の享受者や貴族の屋敷、果ては界螺にも情報を求めたが
結局有力な情報を得ることはできず、ただ時間を費やすことになる
本当は違うのか?はたまた既に貴族の息子ラシム・フマールは煉獄の果ての人なのかとあきらめかけていた
そんな時、燐誡では比較的早く新入りの享受者に声をかけてきた幹部の一人ウダールに仕事に誘われる
なんとまさしくその貴族の息子を使い、儀式を行うというのである
もちろんこのチャンスを逃さず快く協力することを承諾する
実はアイシャム達はその話をほとんど信じなかったがウダールは四行詩を解き、
フマール家の赤い宝石を受け継いだその少年を遺跡に捧げると何かが起こると確信している
そして月の時刻を待ち、燐誡に潜入してすぐに行かされた遺跡にたどり着いた
ここまでウダールに従順についてきた彼らだが、その石の扉を開こうと手をかけた時
カーミルはその銘刀で堕天使の羽根の生えた背中から心臓を一突きにしてしまう
「ケケケケッ、まさかあんな悪戯書きを信じる馬鹿がいるなんてね、
 だけど馬鹿じゃないキミたちも気に食わないよ、死んじゃえ」
ウダールの倒れた遺跡の影から妖霊が邪悪な笑い声と共に現れ、享受者たちに緊張が走る、しかも
「でもその赤い石は本物さ」非実体の指を鳴らすとラシム少年が突然激しく暴れだす
急な動きにアイシャムは抱えていたラシムを取り落とすと、ラシムはなんと服が張り裂け、角を生やし
戦鬼へと姿を変貌させ、享受者たちに向かってくる
結果的に両面作戦を強いられることになったが、こうなってしまったら殺してしまうしかない
冷静に判断を下した享受者の動きは完璧であった
イブティカールの神語術により皮膚を不気味な紫色に変貌させたカーミルは妖霊との持久戦を選ぶ
その間に背後ではアイシャムの愧拳術は変貌したての獄卒の攻撃を寄せ付けず、確実にダメージを与えていく
妖霊の強力な黒炎攻撃はラフィークの補助と回復の白炎で回復し
アイシャムが戦鬼を倒し妖霊の側に加わると
それまで攻撃の手を抑え、相手を油断させていたカーミルはアイユーヴとの連携で一気に大ダメージを与え
この強敵を打ち倒すのであった

ウダールの陰謀を暴き、そして強敵を打ち倒した彼らではあったが
ラシムに関しては貴族の金に物を言わせて危険な反魂を行なうしかないとあきらめていた
その時、奇跡は起こる、ラシムの身に着けていた例の赤石が真昼の様な光を放ち
やがて煉獄に住むほとんどの者が見たこともない巨大な水の景色、海の幻影を見せ、まるごと宝石に納まる
これこそ伝説の世界意思の雫、その海を映す宝石が生命を司ることを本能的に理解した享受者たちは
迷わず所有者となり、力の解放を行なう
宝石から大量の水が溢れ出し、一行を包み込み、そしてラシムに向かって収束する
やがてその場には穏やかな寝息を立てる少年がいるだけとなった

時はすでに夜明け近く、もちろん燐誡には戻らず界螺のアジトへと帰った彼らは
破格の報酬を受け取り、界螺の専属享受者としてこの煉獄で生き抜くことを決意する
やがて地上へ向かう日を夢見て
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