ラーダ神官、カイの記録 |
(注:カイ自身は共通語の読文ができない為、
以下の文章は同僚のラーダ神官の手によって、
書き留められた物です。) ある日の事だった。 いつもの酒場にいつものように我々だけが集まっていたところ、 金髪碧眼の騎士のような人物が現れたのは。 彼はおもむろに、我々が冒険者のパーティである事を確かめると自分に着いてきてくれないか、 と申し出てきた。どうやら、 彼の上司が物珍しさからか冒険者というものを見てみたいからいっぺん連れて来い、という事らしい。 本来ならば、本人からこっちに来るのが礼儀じゃないのか?と心の中では思いながらも、 (一応の最年長という事での)リーダーであるエルフのミルーの判断により "わざわざ"こちらから出向く事になった。 |
我々が面会した相手は、ゼルシドという男だった。 食事の用意でもされているかと出向いてみれば、本当にただ面会させられただけだった。 しかも話の内容は要するに我々への仕事の依頼だった。 ここで初めて紹介されたのだが、我々を呼びにきた彼、名をエッジというお抱えの騎士との事。 彼に着いてここから10日ほど離れたところに、野党に襲われている村があり、 そこに赴き現状把握、及び可能であるならば、野党の殲滅をして欲しいとの事だった。 なるほど、国内での細々とした問題を軍隊を動かさずに、 独自で解決してしまいポイントを稼ごうって事か。確かに冒険者ならば、 失敗しても自身には大した被害もなかろうて。この依頼が成功した際には是非、 ゼルシド氏にはロドーリル国内における冒険者の立場を少しは優遇して頂ければと切に願う。 だが、この手の権力者達は大概が食わせ者であり、 裏で何をしている連中か分かったものではない。というか、単純に俺が嫌いだ しかし、正式な依頼であり相場程度の報酬が頂けるとなれば、俺には異存はない。 受ける受けないはミルーの判断に委ねる事にしたが、エルフの癖に人間、 果ては妖魔に対してまで、情け深い平和主義者である彼女が断るわけもなく、 我々は野党討伐の依頼を引き受ける事となった。彼女がエルフでなければ、 マーファを信仰する事をお勧めしたい。 いや、むしろ彼女をかわきりにエルフ達にも神々に対する信仰を広めるのもいい手かもしれないな。 おっと、話が少しそれてしまった。 依頼を受ける旨をゼルシド氏に伝えるとすでに馬車や道中の食料は用意してあるので、 早速出発してくれと言われてしまった。なんと用意のいい事だろう、 我々が断るなどとは考えなかったのだろうか?ここでふと気付く、 「しまった、もうすこしごねてみれば報酬あがったかも…」と。 しかし、報酬の一部を前金として受け取ってしまった以上、もうすべては後の祭りだった。 |
そして約10日後、村に到着した我々が目にしたのは、
冒険者風の二人と老人、子供が話しあっているところだった。
一瞬、村人が野党にたかられているところか、と思ったのだが、
近づいてみるとどうやら違ったらしい。彼らは野党から離反した元野党だったのだ。 彼らの話によると、プリシスでスカウトされた彼らは、 この村にいる野党達を退治してそれを足がかりにロドーリルに対して反戦を訴える、 という団体に所属していたらしい。初めはその話通りにこの村から野党を追っ払いはしたものの、 村の近くに常駐するようになってから少し様子がおかしいと思い始め、偶然今日、 団体の幹部と共にこの村に見回りに来た際に幹部らの村人に対する 強請りや暴力的な行いを目の当たりにし、村人達を守り団体から離反したとの事。 どうやら、野党による襲撃自体もその団体が仕組んだ可能性もあるらしい。 俺は彼ら二人の話を鵜呑みにしていいものかどうか、完全には信じきってはいなかったものの、 うちのリーダーがどう出るかは予想済みなので、進言はしてみるものの特に強く訴えはしなかった。 案の定、彼らと共に野党グループのアジトへ襲撃を行う事となった。 我々がアジトへ向かっている最中に村が襲われる可能性や、 ロドーリルの人間がいる前で魔法が使えないなぁ、等様々な事を考えながらアジトへと向かった。 もちろん、その間も俺だけは、離反してきたという元野党二人の行動には目を見張っておいたのだが、 特に不信な行動もなかった。 そしてアジトに到着した我々は、表の雑魚共をエッジに任せてアジト内部へと一気に突入した。 アジト内部は元野党の二人からほぼ聞いていた通りであり、話を聞く間もなく、 団体のボスとの戦闘になった。ボスからは事の真相を聞きだす為にも殺さずに捕らえる作戦で、 これといった負傷を受ける事もなくボスを追い詰めていった。 しかし、俺の一太刀がボスを死に至らしめてしまった…。 いや、まさか俺もあんなにスパッと斬れるとは思ってなかったんだって! 恐るべしはパラの両手剣…。 それにしてもエッジの目が無いというのに、 妙に魔法による援護が少なかったような気もしたが気のせいだったのだろうか? |
結局、捕らえる事ができたのは、幹部二人と手下共三人。
幹部達の話によれば、彼らは、今後、用意していたロドーリルの騎士だと分かる鎧を身に着けて、
村を本格的に襲撃するような内容も計画していたらしい。これらの計画を未然に防げた事は、
喜ばしい限りである。その後、エッジと合流しアジト内を捜索したところ、
話の通りの鎧や、村から巻き上げた金銭などを発見。
村のお金をリーダーに預けておき、パーティ内おける俺への見解を向上させておいた。
無駄な努力かもしれないが…。 その後、元野党達の二人も我々と共に、 捕らえた幹部たちをゼルシド氏のところにまで連行するという口実でパーティに加わり、 ロドーリルへとやってきた。 人数は増えた分、幾らかの追加報酬を受け取りパーティで均等に分配した… なんか、損した気はするが、新たな仲間が増えた事でよしとしよう。 以上が、この度の冒険のあらましである。 |